2013年5月4日土曜日

マメ科植物につく「根粒菌」の働きを科学的に考えてみる

「マメ科植物に肥料を与えると窒素過多になりやすい」
「田植えの前にれんげ草を育てると稲がよく育つ」
というのは、マメ科植物の根っこに根粒と呼ばれる粒を作る、「根粒菌」の働きによるものです。
根粒菌は空気中の窒素を取り込んで植物が肥料として使える形に変えており、これは「窒素固定」と呼ばれます。

この働きを、高校生物・化学の知識で、やや科学的に考えてみたいと思います。


窒素は生物にとってなくてはならないものです。たんぱく質等に使われます。

空気中の空気の約8割は窒素ですが、窒素分子は三重結合という非常に強い結合でできているので、その結合を切って窒素原子を他の物質に使うというのは大変なのです(空気が安定なのも窒素の性質によるところが大きいそうな)。
なので、普通の植物は空気中の窒素をそのまま利用することはできません。

ですが、そんな作業をやすやすと(というわけでもないのでしょうが)行えるのが根粒菌。
根粒菌は、土の中の空気から窒素分子を取り入れて、アンモニアを作ります。

窒素固定は、次の反応式で表されるそうです。

N2 + 8 H+ + 8 e- + 16 ATP → 2 NH3 + H2 + 16 ADP + 16 Pi

たしかに、窒素分子(N2)がアンモニア(NH3)になっています。
ATPというのはエネルギーの器で、エネルギーを供給する際にADPとPiに分解されます。
1つの分子を分解するのに、16倍のエネルギーの器が必要ってすごいです。

アンモニアは水に溶けやすいので、すぐイオンになります。
他の細菌によって、硝酸イオンに変えられたりもします。

植物は、硝酸イオンやアンモニウムイオンを取り入れてたんぱく質なんかを作るので、根粒菌が近くでアンモニアを作ってくれるとマメ科植物は助かります。
豆ってたんぱく質豊富ですもんね。

逆に根粒菌は植物が光合成で作った養分をもらっていて、お互い得をする共生関係ができています。
ヤマモモなんかも窒素固定細菌と共生関係を作っていると聞いたことがあります。


というわけで、「マメ科植物に肥料を与えると窒素過多になりやすい」というのは、すでに窒素分が多くあるため。

「田植えの前にれんげ草を育てると稲がよく育つ」というのは、れんげ草の根っこの根粒菌が作った窒素分を稲作に利用するため(「緑肥」と言うんだそうです)。

今はそれほど見なくなりましたけど、今ごろの時期に田んぼでれんげ草が満開になるのは本当に綺麗ですよね。
せっかく満開なんだからもっと長く楽しみたいと見ている側としては思うのですが、植物が元気なうちに鋤き込むほうが効果的なんだそうな。

マメ科植物栽培経験はおじぎ草の移植を試みてダメにしたくらいなので、マメ科植物の根っこに根粒菌のつぶつぶができているのって実物は見たことありません。
ですが検索してみるとカラスノエンドウにもできるらしいので、今度見かけたら見てみようと思います。

以上、根粒菌の豆知識でした。
(……マメ科だけに、とか言ったら負けだと思っています。)

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