「連理の枝」ってご存知でしょうか。
夫婦の仲むつまじさのたとえとして、「比翼連理」という言葉がありますが、このもとになったやつです。
「比翼の鳥」は、ひとつの翼とひとつの眼を持つ二羽の鳥がくっついて、いつも一緒に飛んでいるというもの。
「連理の枝」は、別々に生えている二本の木がくっついて、一本になったもの。
「長恨歌」に出てくる言葉として有名、というより源氏物語に引用されている言葉として知られています。
長恨歌は白居易の詩で、玄宗皇帝と楊貴妃がテーマ。
玄宗が楊貴妃を愛するあまり政治が乱れ、反乱が起きて楊貴妃と離れ離れになってしまいます。
やっと見つけたと思ったらもう楊貴妃は亡くなっていて、かつて愛を誓い合ったときの言葉として「比翼の鳥」と「連理の枝」が出てきます。
そもそも楊貴妃は玄宗の息子の奥さんだったっていうんだからすごい話です。まさに傾国の美女。さぞかし美人だったんだろうなあ。
源氏物語では、光源氏の父である桐壺帝が、母である桐壺更衣(更衣なのであんまり身分が高くない)を寵愛するあまり、更衣は他の女御(身分が高い)なんかから反感を買って壮絶ないじめに遭い、早世してしまいます。
この二人のかつての様子を表す言葉として「比翼の鳥」「連理の枝」が使われているんです。
原作の方はきちんと読んでないので分かりませんが(一番最初の桐壺で挫折するパターン)、「あさきゆめみし」ではやたらと光源氏が女性を口説く際に使っていた記憶があります。
比翼の鳥はいるわけないし、連理の枝も想像上のものでしょと思ったら、こっちは本当にあるんです。
日本各地にあるみたいなんですが、私は下鴨神社と京都府立植物園で見たことがあります。
どっちも枝というか、幹がくっついた感じでした。
下鴨神社の方は、摂社の相生社にあり、「連理の賢木」と呼ばれています。
昔からずっとあって、枯れると新しいのが糺ノ森のどこかに生えてくるらしいです。ミラクル。
今の代のはそれほど太くなくて若そうでした。
何の種類かっていうのはちょっと分かりませんでしたが、賢木っていうくらいだから榊でしょうか。
京都府立植物園の方はわりと大きめで、モミとムクノキがくっついたものだそうです。
モミはマツ科モミ属で、ムクはニレ科ムクノキ属。科が違っていてもくっつくんですね。
記憶が定かではありませんが、森の中、池の近くにあった気がします。看板が出ていてかなり分かりやすかったです。
京都府立植物園は、川端康成の「古都」にも出てきます。
この作品も例によって途中で挫折しましたが、北山杉が出てきて花粉症持ちにはちょっと辛かった覚えがあります。読むだけであんなにムズムズしたのは初めてでした。
話は変わりますが、「比翼の鳥」について調べていて「アンドロギュノス」を思い出しました。
人間はかつて男と女がくっついた姿をしていたが、傲慢ゆえにゼウスを怒らせてしまい、二つにわけられた。それ以来、男と女はかつての半身を求めて恋しく思う、みたいな話だったと思います。
プラトンの「饗宴」に出てくるらしいです。聞きかじりなので詳しいことは分かりません。
アンドロギュノスも歩きにくかったりしないのかちょっと疑問ですが、比翼の鳥は息を合わせないと飛べない気がするので、たしかにこっちの方が大変そうです。仲良くないとやってられませんね。
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