すみれが好きです。
植物としてのすみれも可憐で好きなんですけど、物語に出てくるすみれの持つ雰囲気も好き。
本当かどうかわかりませんが、ゲーテがポケットにすみれの種を入れておいて、散歩のときにばらばら蒔いて歩いたらしいです。
ゲーテは「すみれ」という詩を残しているみたいなので、少なくともすみれが好きだったのは間違いなさそうです。
この話を聞き、これは真似したい!と思ってすみれを育てようとしたことがあります。
ですが難しいんですよ、すみれを育てるの。
春先によく小さい鉢で売っているので、それを買ってくるんですけど、花を咲かせて種をつけた後枯れちゃうんです。
困って調べてみると、すみれっていろんなところに咲いているわりには気難しくて、その環境が自分に合わないと種を作って子孫を残し、自身の株はさっさと枯れてしまうのだとか。
たしかに私が枯らしたすみれたちも、花だけでなく種の鞘をたくさんつけていました。
この種の鞘、「閉鎖花」というものです。
自家受粉によって確実に種を作ろうとしているのです。
通常の花は外に向かって開くので、他の株から花粉をもらうことができ、遺伝的多様性は維持できます。
つまり、遺伝子にバリエーションがあったほうが色々な環境で育つことができるし、環境が変化した時にも生き残れる株があるかもしれない、ということです。
ですが受粉を虫や風に頼るので(すみれの場合はたぶん虫)、確実に受粉できるかどうかはわかりません。
閉鎖花は文字通り閉じた花で、自家受粉によって種を作ります。
外から花粉をもらえない代わりに、自分の雄しべの花粉を外にもらすこともありません。
高確率で受粉できますが、どうしても育ちにくかったり、環境の変化に適応しにくかったりする種ができてしまう可能性があります。
(買ってきたF1種からは均一な性質のものが育つけど、そこから種を採ってF2を育てるといろんな性質のものができる的なあれです。)
また、最初から種のための鞘を作ればいいので、花びらを作ったりする手間も省けます。
長い目で見ると通常の花を咲かせたほうがすみれという植物全体のためにはいいのですが、長く生きられそうな土地じゃないからそんな悠長なことはしていられない、早く種を作らないと、ということで、うまく育たないかも知れない種ができるリスクを負いながらも閉鎖花によって種を作るんだと思います。
こんな気難しさなのに、合う土地を見つけると爆発的に増えたりするんですよね。
自分が住むところは自分で選ぶ、その気高さも素敵です。
自分は枯れても子どもが育てばいいっていうのもかっこいい。
すみれの種は三角形の鞘に入っていて、熟してくると下向きの鞘がだんだん上を向きます。
そして120°ずつ三つに割れ、種が飛びます。
割れた鞘がさらに半分に閉じようとして、その閉じる力に負けて種が飛び出すって感じです。絵がないと分かりにくいですね……。
種が全部飛んじゃうと、三菱のマークみたいな殻が残ります。
パチパチいろんなところに飛んでいくので、種を採る時は上を向いてきた鞘を切り取って容器に入れておくか、鞘に袋や布をかぶせて種がこぼれないようにするといいそうです。
採ってすぐ蒔くと発芽しやすいみたいです。
鞘を切り取って回収した種を晩秋ぐらいまで待って蒔いた時は、全然芽は出てきませんでした。
ひょっとしたら熟し方が足りないまま回収できちゃった可能性もあるかもしれません。
日本っぽい名前がついているすみれや、外で見かけるすみれは大抵鞘が三角形ですが、ニオイスミレは丸っぽい鞘です。
これを知った時、見た目は似てても種類が違うんだ〜と、ちょっと楽しくなりました。
それにニオイスミレはすんごーーくいい香りなので、見つけたらまた育ててみたい。
日本の野生のすみれは交配しまくっていて、詳しい人でも同定は難しいみたいです。
すみれといえば、「おもひでぽろぽろ」に出てきた「三色すみれ風呂」を思い出します。
熱海のホテル大野屋にはいろんなお風呂があって、主人公のタエコがここに行くのを楽しみにするんです。
三色のすみれかー、すみれって紫だけかと思ってたけどそんなに何色もあるのかーと思っていたんですけど、「三色すみれ」ってパンジーのことなんですね。最近まで知りませんでした。
すみれの学名はViolaですし、小さいパンジーはビオラって言いますもんね。
実際のすみれも濃い紫、薄紫、白、黄色とけっこうバリエーション豊か。
黄色いスミレは生で見たことはないので、いつか見てみたいです。
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